にちぶんにっき

早稲田大学日本語日本文学コース室のブログです。

弓矢取る身

こんにちは。お暑うございます。みなさまご体調いかがですか。
私が、昨日の深夜、もう何年も住んでいる家でドアの角との距離を見誤って頭をぶつけたのも、きっと暑さのせいでしょう。

さて私は以前少しだけ弓道を習った経験があります。
本気でやっている方には申し訳ないほど中途半端な技量・精神しか身につきませんでしたが、日本文化の伝統に少しは触れられた思いでした。
武士は「弓矢取る身」と自称することもあり、弓矢は古来重要な武器でした。

弓矢関連から生まれて現在使われている日本語もたくさんあります。

まず、よく「正しい日本語/間違った日本語」の話題で出てくる「的を射る」。
これはもう弓矢に関係することがすぐにわかりますね。
「的を得る」は間違いとされますが、日本国語大辞典には高橋和巳の小説から例を挙げ、「的確に要点をとらえる。要点をしっかりとおさえる。当を得る。的を射る。」(『日本国語大辞典 第二版』小学館、2001)と語釈を載せています。
「正鵠を得る」という言葉があることから、「的を得る」も誤用ではないという意見も多くなっているようです。
「的を得る」を使うと「間違い」と言われる可能性は高く、おすすめは出来ませんが、「的を得る」が間違いなのかあやふやな状態になると、「的を射る」自体を使うのを避けようという流れになるかもしれません。
「ややこしいから論争を呼ぶ言葉は使うこと自体を避けよう」ということになれば、語彙が消えていくことにつながるので、これが一番寂しい結果です。
言葉の正しい/間違っているは難しい問題ですね。

さて話がそれましたが、「的を射る」で合ってたはず…と言うときの「はず」。
これは、矢の端の弦をかける部分(矢筈)が弓の弦によく合うことから、「ものごとが当然そうなること」を指す表現になったそうです。

「はず」は学校文法では形式名詞と呼ばれ、それ自体の意味が薄まっている名詞です。そのため、「はず」の語源が具体的なものの名前だということは気付かない方が多いのではないでしょうか。
と、言うお前も知らなかったんじゃないかって?…はい、図星です。最近まで知りませんでした…。
い、今使った「図星」!これも的の真ん中の黒点を指す言葉が語源なんですよ?ご存じなかったでしょ?私?知ってましたよ?ハイ!

えー、このように、弓矢関連から生まれた言葉はたくさんあります。いや、あるそうです。私も最近学んだ部分が多くあります。
言葉って、面白い!

では、みなさま、暑さ対策をしっかりなさってくださいね。
私はあまりの暑さにすでに冬が恋しゅうございます。あつあつの白菜鍋も…考えたらもっと暑くなりました。
それでは。