にちぶんにっき

早稲田大学日本語日本文学コース室のブログです。

お酒の席の日本語

こんにちは。波留です。
東京は寒い日が続きますね。風邪など引いていませんでしょうか。


先日、お酒の席で「鮭とば」をつまんでいて、「『とば』って何?」という話になりました。

その場にいた方がWikipediaを見てくれたところによると、「『とば』は漢字で冬葉と書き、(略)また、『とば』がアイヌ語の tupa トゥパ(略)に由来する可能性もある。」といいます。

大辞泉も「鮭冬葉」の漢字をあてていますが、日本国語大辞典には「さけとば」の項目はありませんでした。
少なくとも、いま調べた限りでは、語源ははっきりしないようです。
インターネットで鮭とばを販売しているお店のページでは「鮭冬葉、とは雪がちらつく頃かれ木に残る一枚のちぢれた枯れ葉に似ていることからきています。」(有限会社 南保留太郎商店ホームページ)と説明しているものもありました。


その席では、「『とば口』の『とば』?」と言ってくれた人もいました。

「とば口」という言葉、恥ずかしながら私は聞いたことがありませんでした。
インターネットで検索すると、Yahoo!知恵袋で「普段の会話で、『とばくち(とば口)』って、使ってます?」という質問があり、関東出身者の「使う」、関西出身者の「使わない」という回答がありました。
埼玉の秩父では「とばっくち」と言うとか。
秋永一枝先生の『東京弁辞典』にも「とばくち」という項目があり、「入り口。はじめ。」の意味だとされています。
東京弁辞典』の収録語は、東京だけでしか使われていなかったわけではありませんが、「とば口」は東京でよく使われた言葉ではありそうです。

ただ、一般的な国語辞典や小説にもふつうに載っている言葉なので、完全に方言といえるかは微妙なところのよう。やはり知らなかったのは私が関西出身だからではなく、私の無知が原因かもしれません。

「とば口」の「とば」はインターネット上では「戸場」とか「鳥羽」の漢字をあてている人がいますが、私が見た限り、文献には仮名の例しか見当たりませんでした。


鮭とば」と「とば口」とのつながりはわかりませんでしたが、身近な食べ物の名前などの語源をああだこうだと推測しあうのも、お酒の席のひとつの楽しみ方かもしれません。

それでは、また。


【参考URL】
有限会社南保留太郎商店
http://www1.ocn.ne.jp/~nanpo/newpage2.htm

Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1212854357

【参考文献】
秋永一枝編『東京弁辞典』東京堂出版、2004年