にちぶんにっき

早稲田大学日本語日本文学コース室のブログです。

漫画で読む日本文学 その三

皆様こんにちは、にちぶんにっきレアキャラにも程があると一部で噂の千鳥です。
あまりのブログの書かなさに小倉さんも波留さんも呆れ気味、
最近小言も言われなくなった始末で、そろそろ書かないと愛想をつかされる気が致します。
というわけで漫画で読む日本文学、その三をやりたいと思います。
※その一はこちら その二はこちら


・『はやげん!〜はやよみ源氏物語〜』花園あずき (新書館、全一巻)
タイトルからお分かりの通り、源氏物語を漫画化したものです。
一冊でコンパクトにまとまっている点(五十四帖がたった200頁)、
エピソードを流行語を交えてわかりやすく描いている点などが素晴らしいのですが、
何より絵がとっても可愛いです!
源氏の漫画化につきものの大問題、血のつながりの描き分けも、
繊細な画風にもかからずかなりわかりやすくなされており、
たくさん女君が出てきても「これ誰だったっけ…」と人物相関図を確認し直すこともありません。
少々独自で現代風な解釈(紫の上が若干バイオレンスな性格をしていたりします)もありますが、
またそれが面白く、「あー確かにこう読んだら面白いかも」と思わされてしまいます。
長ったらしい54帖をさくっと読み終わることが出来るので、ストーリーを楽しむには最適です。


・『妖変 源氏物語寺館和子(ぶんか社、全四巻)
可愛らしい『はやげん!』とは打って変わりまして、
こちらはぐっとおとな向けの源氏物語の漫画化です。
レディースコミック誌に連載されていたもので、少々過激な描写もあります。
と言っても脚色されてるわけではなく、物語を詳細に絵に起こすとこうなっちゃうんですよね。
実は私がこの作品を知ったのは『あさきゆめみし』を読む以前で、
小学生向けの簡略版源氏物語を読んだ、その次に触れた源氏関係の作品でした。
たまたま時間つぶしに雑誌を立ち読みしようと開いたところが、
玉鬘と鬚黒との結婚(と言っておきます)シーンで、
まだ若かった当時は大変衝撃を受けて直ぐに雑誌を閉じてしまい、しばらくは忘れておりました。
数年経ってそんな話も読めるようになってきたところで文庫化されたものを見かけ、
今度はひゃーひゃー言いながらも大変楽しんで拝読致しました(すみません)。
塾講師さんや先生が、生徒の方におすすめするにはちょっと…かもしれませんが、
リアルで過激な恋愛の描写を楽しみたい方には是非とも読んで頂きたい作品です。


・『恋ひうた ―和泉式部異聞』江平洋巳(小学館、全三巻)
和歌に関する漫画はうた恋い。だけではありません。
こちらは和泉式部を主人公にし、漫画です。為尊親王との恋愛と破局
橘道貞との結婚とその顛末あたりまでが中心。
いわゆる『和泉式部日記』の書き出しに至る前の部分です。
とにかく登場人物、キャラが立っています…。
和泉式部がまず悪女(というよりは奔放過ぎ)、友人の春覚はバイセクシュアル、
道長はどがつくヒールで策士な上になんとお顔がかえるです。
歌の引用や話の流れはしっかりしており、考証もきちんとされています。
正直短くて物足りない…というところもあるのですが(和泉式部日記に至るまで見たかった!)、
紫清の二人に比べれば若干ながら知名度が落ちる和泉式部の話を漫画で楽しめるのが素晴らしいです。


・『人間失格古屋兎丸(新潮社、全三巻)
前回・前々回と古典ばっかりじゃないか!というご意見を頂いたので、
最後は太宰治の『人間失格』の漫画をご紹介します。
人間失格』自体の漫画化は結構あるのですが、こちらの作品のおもしろいところは、
単に小説を漫画にしているだけではなく、物語の舞台を現代に移しているという点です。
手記はブログにアップしたもの、画塾は美術予備校、淫売婦はキャバクラのお姉さんなどなど…。
現代風に少し名前が変わっている人物(ヨシ子→佳乃など)以外はかなり忠実です。
現代に「アップデート」された『人間失格』なので、
太宰のファンの方も、近現代文学がご専攻の方も、結構ぐっときてしまうのではないでしょうか。
そして古屋さんの絵が大迫力、こんなパワーのある絵を漫画として連載したなんて…と感嘆致します。
ただし、上に挙げた『妖変〜』と同じく過激な描写があちこちにあるので、
こちらも塾講師さんや先生が生徒さんにおすすめするにはちょっぴり不向きかもしれません。


以上、今回は四作品をご紹介しました。
今回はちょっぴり変わり種の漫画を中心に集めてみたのですが、いかがだったでしょうか。
ただいまコース室内千鳥文庫(空きスペースにこっそり勝手に設置しました)では、
『うた恋い。』『うた変。』『はやげん!』『とりかえ・ばや』などを取り揃えております。

この時期はお菓子のいただきものも何だか多いので、休憩がてらご来室下されば嬉しいです。


それではこのあたりで失礼致します。
秋期中にもういちどぐらいは書けるといい・・・な・・・(予定は未定)。