にちぶんにっき

早稲田大学日本語日本文学コース室のブログです。

平安的女子力

こんにちは、千鳥です。今日は天気が良くって暖かくて幸せです。
(コートなくても平気な気温で嬉しさ倍増)


先週、お香の日の話をしましたが、それと関連する話をひとつ。
源氏香というものがあるのをご存知でしょうか。
いくつかのお香を合わせて焚いて、使われている香木を当てる組香という遊びの一種です。
源氏香では、五種類の香木を使用します。
まず、各種五包ずつ計二十五包のつつみをつくり、そこから無作為に五つを選びます。
次に、それを順番に焚いて、その香りを聞き(嗅ぎ)ます。
そして紙に五本の縦線を引き、右から1番めの香、2番めの香...と設定し、
同じ香りがあれば、縦線の上部を横線を引いてつなぎます。
その線の形の組み合わせが52種類あり、それぞれに源氏物語の巻名が与えられていますので、
回答者は該当する巻名を使って答えます。これが源氏香という遊びです。
(なお、源氏物語の実在巻数は五十四帖ですので、最初の桐壷巻と最後の夢の浮橋巻に該当する香りはありません)
実際にやってみると、香りを当てるのみならず、
まず52種類の線の形とそれに対応する巻名を覚えなくてはならないので、意外と大変だったりするそうです。


組香としてだけではなく、この線の形そのものにも人気があり、、
「源氏香」=「源氏香之図」(源氏香の線の形)を指すようにもなりました。
布や着物の模様や茶道具の蒔絵、和菓子なんかにもこの意匠が使われています。
宇治市にある源氏物語ミュージアム売店では包装紙に源氏香之図が印刷されていたり、
最近では、アニメにも登場したりしています。
(ちなみに私が源氏香の存在を知ったのはこのアニメだったり・・・おすすめです)
そんな感じでなんとも風流な遊びです。


実際の『源氏物語』中にはこのような遊びはありませんが、
(後世に作られた組香に源氏物語の巻名を当てたものなので)
梅枝巻には「薫物合せ」という場面があります。
光源氏が女君たちに香を調合させ、その優劣を判ずる、という場面です。
とてもきらびやかで風流な場面でうっとりしてしまうのですが、
他にも襲(着物の色の組み合わせ)や和歌の上手下手、書道、楽器などなど、
平安時代の貴族の女性の「女子力」の高さには驚かされてしまいます・・・。
うっとりするたびに、現代に生まれてよかった!と強く思う、鼻炎持ちの千鳥でした。