にちぶんにっき

早稲田大学日本語日本文学コース室のブログです。

神奈川近代文学館「太宰治展」×文豪ストレイドッグス

こんにちは、千鳥です。
今年度はせめて週一ブログを書くことを目標にしたいです。


先週に引き続き今週も漫画がらみのお話。
ただいま、神奈川県立近代文学館では下記の特別展が実施されています。


・「生誕105年 太宰治展 ―語りかける言葉―」
日程:2014年4月5日(土)〜5月25日(日)
於:神奈川県立近代文学


コース室にも大きなポスターやチラシが届いています。


そして、先日四巻が出たばかりの漫画『文豪ストレイドッグス』の帯。


あれ?


これかー!!!!



と言うわけで、コミックスと小説版・ヤングエースを抱えて行ってきました。


さっそく受付で六点提示して缶バッジをゲット。
最新四巻で太宰さんが貰えました!(芥川さんは小説版で貰えます)


千鳥「やっぱり、こういう企画するとお若い方いらっしゃいますか?」
スタッフさん「土日が大変なことになっております」※平日に行きました
千鳥「(笑)」
(お忙しい中お話を伺わせて頂き、ありがとうございました!!)


展示の途中にも文豪ストレイドッグスのコーナーがあり、
漫画の原稿や今回の展示ポスターの太宰の写真をイラスト化して写真と並べたもの、
3巻の帯に登場して話題になった、
京極夏彦綾辻行人両氏のキャラクターイラストなどが展示されていました。
(他にも『ダヴィンチ・コード』のダン・ブラウン氏キャラパネルがあって驚きました)
これは漫画のファンならかなり楽しいでしょう・・・!!!
若い世代に太宰の実像を知ってもらいたい」と言う狙い、大当たりのようです。


他にも、「読書メーター」から太宰作品の感想を抜粋して展示するなど、
いろんな工夫が為されていて、なんだかいいなぁ楽しいなぁとニヤニヤしてしまいました。
あらゆる世代の人に向けて文学の展示を!という意気込みって、素敵です。
文学の展示はやはり、美術の展示と違いマニアックな性格を持つことは否めない。
そこをどうやって打破するか、どうやっていろんな人に見て貰うか、って難しいですよね。
それこそ「古典の現代受容」みたいな問題でもありますし、文学全体の問題でもあります。
「遊ブン学部」などと言われて笑って流さざるを得ない世の中変えたい変わりたい。


ミッション完了のあとはじっくり展示を拝見。
草稿と原稿の比較はやっぱり面白いですねー。


人間失格』(原文は『昭和文学全集 5』/小学館より)
原文:ああ、この一群の画家たちは、人間という化け物に傷めつけられ、おびやかされ
草稿:ああ、ゴッホもゴーギヤンもセザンヌも、人間といふ化け物におびやかされ
※展示されている原稿は旧かな遣いです。


こんな風に推敲の跡が見えるとなるほどなぁ、と妙に納得します。
この場面だと直前に「ゴッホゴーギャンセザンヌ、ルナアルなどというひと」と言うくだりがあるので、
二度名前を連ねるより「一群の画家たち」とした方がはばったくなくて確かによいです。


私は太宰だと『駈込み訴へ』が特に好きなのですが(次点『パンドラの匣』)、
知名度的に『メロス』におされがちなこの作品、きちんと展示があって嬉しかった!
言わずもがな、イスカリオテのユダの話を書いた短編なのですが、
本文パネルにジョットの「ユダの接吻」の絵が添えてあり、
この絵がとても好きな私は思わず小声で快哉を叫んでしまいました。
よく使われるモチーフで同様の絵は多いのに、この絵を使ってくださるとは運命・・・!


また『右大臣実朝』の展示では執筆にあたり参照しただろう本人蔵の『金槐和歌集』があり、
わー岩波文庫のやつだ!これ持ってる!わー吾妻鏡読んでたんだ!わー年譜だ!と一人興奮。
何にしても「翻案モノ」に強い執着を抱いてる私なので(文学漫画好きもその範疇)、
こういう「どの元ネタを使ったのか」というものが見える展示はとても楽しい。
『桜桃』『駈込み訴へ』は「ルカの福音書」、『女生徒』の有明淑の日記などもありました。


そして近現代作家の展示と言えば幼少期の物品・原稿・書簡・写真ですよね。
若いときのスナップ写真がびっくりするほどイケメンでふぉぉー!となったり、
中学時代の書道が流麗で「え、こんな綺麗なお手蹟だったのか」とびっくりしたり、
授業用ノートの夥しい数の「芥川龍之介」落書きを見てどんだけ好きなの!と笑ったり、
井伏鱒二伊馬春部との交流はこんなに深いものだったのかーと感じ入ったり、楽しいです。
ポスター写真の「バー・ルパンにて」は坂口安吾織田作之助との会の様子を写したものですが、
この時に撮られた別な写真の織田作之助が物凄くいい笑顔!ふふっと笑ってしまいました。


だいぶん前、小倉くんに「皆一度は太宰にかぶれるよね」と言われて若干同意しかねていた私ですが、
今になってようやくその意味が分かったというか、かぶれ期が到来しそうな勢いです。
作品そのものはほぼ読んでいたのに、いまになって腑に落ちたというか急に熱が出たと言うか。
昔は「なーんでこの人こんなモテてんの?」とか思っていたのに、
今じゃ「彼とだったら死ねるのも分かるわぁ・・・」とか思ってる始末(死にませんけど)。
こういう熱、ふつうは高校辺りの通過儀礼らしいのに大学院生にして・・・って感じですが。笑


そして帰り際、ミュージアムショップで「太宰治の言葉」カプセルガチャを発見し、
一回百円とのことだったのでガチャッとまわして出て来たのがこちら。



以上、最近ブログが暴走気味だともっぱらの噂、千鳥がお送りしました。