にちぶんにっき

早稲田大学日本語日本文学コース室のブログです。

おじや

こんにちは。波留です。
昨日おとといは大学入試センター試験が行なわれましたね。
早稲田大学を目指している受験生でこのブログを読んでくれている人もいるのでしょうか。
一般受験の人はあと少し受験勉強が続きますが、大学での生活をイメージしてがんばってほしいと思います。
大学生・大学院生も今月は期末試験の時期です。
インフルエンザも流行っているので体調管理が重要ですね。


さて、体にやさしい食べ物といえば、いまの時期、あたたかいものがやはりいいですね。
昨日、あるテレビ番組で「土鍋」の特集をしていて、各国の(調理器具としての)鍋も紹介されていました。
そこでスペインの「olla」(オジャ)という鍋が出てきたのですが、ナレーションで「『おじや』の語源とも言われています」との説明が。
へえ、そうだったんだー、と一瞬思ったものの、にわかに信じがたいので調べてみました。


日本国語大辞典』(第2版)で「おじや」を引くと、「(「お」は接頭語)雑炊(ぞうすい)をいう女性語。」などとあります。
語源としては、『大言海』の「ジヤは煮える音のジヤジヤ」という説や、前田勇編『上方語源辞典』の「ジヤジヤと時間を長くかけて煮るさま」という説を紹介しています。


広辞苑』(第6版)には、「(「じや」は煮える音)雑炊。」とあります。


『上方語源辞典』の「ジヤジヤ」は、「時間を長くかけ」ることを表すのか、そのときの音なのか、はっきり分からないのですが、いずれにしても辞書類には「煮える音」説が複数見られます。


Wikipediaでは「雑炊」の項のなかに「おじや」の説明があり、語源について、「米を煮る音が『じやじや』と聞こえるからという説や、スペイン語で(調理器具の)鍋を意味する語『olla』(オジャ)によるという説などもある。」としています。


どうやら、「olla」語源説は俗説の類のようです。
ただし、「煮える音」説もはっきりとしたものではないので、テレビ番組の説明を全否定は出来ません。
「ジヤジヤ」という音がするかと聞かれれば、そういう気もするし、違うような気もしますね。


ところで、上に引いた辞書の記述では、「おじや」と「雑炊」は同じものとされているようでした。
「おじや」と「雑炊」が同じものを指すかどうかは、人によって意見が分かれるところかもしれません。


また、ひとまず「おじや」=「雑炊」として、「おかゆ」との違いは?
これは、たとえばインターネット記事「特集 雑炊・おかゆ・リゾット」にもあるように、「おじや」「雑炊」は一度炊いたご飯を使用していて具が多く入っているもの、「おかゆ」はお米から作るもの、という認識が一般的なようです。


「雑炊」について、『日本国語大辞典』では、見出しに「増水」ともあり、「『雑炊』は近世からのあて字。」としています。
一度炊いたご飯に水を足すから増水というのでしょうか。


一方、「かゆ」について『日本国語大辞典』には、「米を蒸したもの(飯=いい)に対していう。古くは、水分の少ないものを堅粥(現在の飯にあたる)、水分の多いものを汁粥(現在のかゆにあたる)といい…」とあります。
昔の「飯(いい)」は後世にいう「強飯(こわいい、こわめし)」(蒸したもの)にあたり、炊くものは、現在のいわゆるご飯(「かたかゆ」といった)を含めて「かゆ」と総称したようです。
そこから現在の「おかゆ」になっているので、お米を炊く前の段階で水を多くしたのが「おかゆ」だということでしょうかね。


こういうふうに見ると、「おじや」「雑炊」と「おかゆ」の違いはすっきり理解できるように思いますが、「残りご飯でおかゆを作るレシピ」などもインターネット上に多数存在し、それらがすべて誤りとはいいきれません。
やはり人によって解釈が分かれるところもあるといえます。


1月も後半に入り、7日もとうに過ぎてしまいましたが、「七草粥」は作り方がどうであれ「七草おじや」とか「七草雑炊」とはいいませんね。ひとまとまりの名詞だからでしょう。


鍋料理の「締め」に食べるのは、「おかゆ」でなく「雑炊」「おじや」だ、という人が多いでしょうか。
逆に風邪のときに食べるのは「おかゆ」だ、という人が多数派?(でも、具がたくさん入っていたら「おじや」「雑炊」だ、という人もいるかもしれません。)
お正月気分に別れを告げ、試験等がんばらないといけない時期。
体調管理をしっかりして、「おかゆ」(「おじや」?「雑炊」?)のお世話にならないように気をつけたいところです。


それではまた。


【参考】
キリンレシピノート「特集 雑炊・おかゆ・リゾット」
http://recipe.kirin.co.jp/otsumami/feature/024/